2009年09月30日

【企業法務】証券会社と商社の法務の相違点

先日の記事について、「コンプラ法務」さんよりコメントが寄せられていたので、早速拝見させて頂いた(どうもありがとうございました)。

1.証券会社における設立当初の法務部門
それによると、どうも金融機関の法務部門において勤務しているらしく、私もついつい前職を思い出してしまった。記事にも記したが、私の前職は証券会社の法務部門である。その入社の経緯は前にも述べたとおり、その会社が法務部門を設立するにあたり、スタッフを募集していたからである。

しかし、後々聞くところによると、その目的は当時の社長の方針で自社の顧客に反社会的勢力(いわゆる暴力団)が入りこむのを防止するためだったらしい。したがって、こちらの方がメイン業務とされており、私が当初想像していた戦略法務・契約法務・コンプライアンスなどは全くかかわることができなかったので、非常に落胆したものである。ちなみに、同時期に入社した先輩は大手メーカーの法務部門出身であり、それ相応のキャリアを有していたのだが、このような状況に失望し、半年ほどで転職していった(笑)。従って、私もコンプラ法務さんと同様に再度転職しようかと思ったこともある。しかし、当時の私には法務のキャリアが全くなく、転職市場で評価されないのはわかっていたので、最低3年間はがんばろうと決意したのだ。なぜなら法務の求人でまず求められる人材スペックは「企業法務担当者を2〜3年経験していること」だからだ。

2.開き直ってからの私がとった行動
そうして、私が実践したことは「コンプラ法務」さんと非常によく似ている。

@法務系の専門書や顧問弁護士からノウハウを盗んで蓄積していくこと。また定期的にそれを見直した上、いつ転職してもよいようにメンテナンスすること
A法務案件があれば社内のいろいろな部署に顔を出し、自分を売り込むととも
に経験を積んでいくこと
B将来転職するため、人材紹介会社のHPをチェックして求人案件を確認すること
Cよい機会と割り切って、経済の仕組みを知るため、証券会社について知ることに努めること
D法務系の資格(ビジネス実務法務検定ビジネス著作権検定ビジネスコンプライアンス検定個人情報保護法検定認定コンプライアンスマネージャー・TOEIC)を積極的に取得すること


このように、自分の今いる環境の中で最大限できることを着実にやっていくことが将来の自分のキャリア形成につながるのだと思う。この時にゼロから自分なりに仕事に一生懸命取り組んだことは現在の私にもキャリアにも非常に反映されている。従って、私の法務ノウハウは本から盗んだ知識を実践で生かして習得していったもので、どちらかというと我流に近い。しかし、それでもこういった取り組みを継続すれば自分を成長させることはできると確信している。

3.証券会社と商社の法務とは
証券会社の法務は、やはり一般の事業会社のそれとは特殊である。やはり商品(モノ)ではなく有価証券を個人・法人客に販売することがビジネスモデルであるからだ。たとえば、取引(売買)基本契約書を審査することは全くないし、一方で個人情報がらみの案件も非常に多かった。また、証券の仕組みや証券取引法(現在は、金融商品取引法)そのものに習熟しなければ、本当に力を発揮することができない。私はこれが本当に嫌いで、在職中は苦労したものだ。よく上司に質問などしていたが、結局よくわからずじまいであった。

ひるがえって、現在私は商社の法務担当として勤務しているのだが、まずモノを動かしてナンボの世界であるためほぼ毎日取引基本契約書の契約審査を行っている。必要となる法令は民法・会社法だろうか。また、証券取引法ほどの強力な規制法が存在しないため、ある意味のびのびと仕事ができるのである(ただし、外為法や環境法、海外の法律についても留意は必要で決して気は抜けないのだが)。あと、英文契約書も必須なので、英語力は高いにこしたことはない。私もまだまだ勉強中なのだが、こちらのノウハウも習得していきたいと考えている。

日本に法務担当者は数千人いるといわれているが、私のように証券会社と商社の法務担当を務めた者はそうそういないのではないだろうか。そうやって身に着けた感性を生かして、本ブログでも様々な情報を発信していきたい。


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2009年09月29日

【契約審査】契約審査チェックリストの有効活用

1.契約分類ごとの留意点
 契約審査を行う際には、契約類型ごとに留意するべきポイントがある。たとえば、自社を売主とする売買基本契約書ならば、期限の利益喪失・解除規定・相殺などいわゆる債権保全条項の適否については見落としてはならない。また、秘密保持契約書ならば、秘密情報の定義・秘密保持義務の例外規定、秘密情報の複製/返却の取り扱いなどについて明確に規定する必要がある。

2.チェックリストの有効活用のすすめ
ところが、見るべきポイントが多くある場合、これらの論点をとても覚えきれるわけはない。そこで、私はエクセルファイルに契約類型ごとにチェックリストを作成しておいた上で、こちらを印刷してから契約審査を行うようにしている。たとえば、自社が売主である売買基本契約書では、以下の箇所について注意する必要がある。
  
<瑕疵担保責任>
◎補償責任の内容は以下のいずれか。(修理・代替品提供・個別契約解除・一部減額・損害賠償)
◎補償責任の期間の長さは適切か。(商慣習に従い、引渡日から1年間が望ましい)
◎損害賠償の限度は適切か。(×一切の損害、すべての損害)
◎通常の無過失責任期間経過後に課せられる責任が過度に重くないか。

<知的財産権>
◎商品に関する知的財産権の保証は過度に重くないか。
◎新たな知的財産権が発生した場合の取り扱いは定められているか。
◎商品について第三者より知的財産権に関する請求を受けた場合の取り扱いは明確か。


契約類型ごとに見るべきポイントはほぼ決まってくるので、あらかじめこのようなツールを準備しておくことは業務を迅速に行うため、非常に有効な手段だと思う。本ブログをご覧の方も自分なりの契約審査チェックリストを作成することをお勧めしたい。



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2009年09月27日

【書評】「カバチタレ!」田島隆/東風考広(講談社)

最近、TUTAYAのレンタル漫画を利用してこの本をよく借りている。



主人公は、広島の行政書士事務所に補助者(資格を持たないスタッフ)として勤める青年で、クライアントからの様々な依頼案件に法律知識を生かして全力で解決するというストーリーである。これは、現在でも講談社の「週刊モーニング」に連載されている(現在では主人公は有資格者となっており、それに合わせてタイトルも「特上カバチ!/カバチタレ2」と変更されている)。法律事務所が舞台ということで、司法書士事務所の勤務経験がある私も興味深く読んでいる(ちなみに公式サイトによると、原作の田島氏も司法書士事務所の勤務経験があるようだ)。この漫画では、場面場面における法律論の展開もさることながら、「世の中の仕組み」「社会のあり方」「人間の本性」等が露骨すぎるほど描かれていて、以下の点で他の漫画とは確実に一線を画している。

1.物語が決してハッピーエンドに終わらないことがある。
物語によっては、主人公たちが全力を尽くしても、依頼者が完全に救われないことがある。ここに世の中というものがリアルに描かれていて、正直後味が悪いくらいなのだが、逆にそれが現実味をかもし出すことになっている。

2.登場人物のお金に対する執着心がかなりシャープに描写されている。
依頼者は、零細企業や個人が多く、決して裕福なわけではない。そのため、お金が絡むと親族、友人といえども、暴力沙汰に発展するほどの内輪もめを起こしたりもする。やはり世の中は「お金」なのかな、とまじまじと思わされる。

3.人間というものは、本音は利害に応じてしか動かないということが描かれている。
登場人物に聖人君子はほとんどおらず、すべて自分の利害で動いている。たとえば、警察、検察、裁判所といえども、自らの利害を第一に考え、自分にメリットがあるか、職務上やむをえない状況に追い込まれるまで、積極的に動こうとはしない。このように、人間とは損得勘定で動く生き物であるというこがこれでもかというくらいに描かれていて、正直読んでいる私まで鬱になるくらいである。


しかしながら、本書は、下手なビジネス書、経済書よりも世の中の仕組みが事細かに描かれていて、読み手にはある意味非常にためになる漫画だと思う(個人的には学校の副読本に指定してほしいぐらいである)。従って、私はこの漫画を法務関係者のみならず、すべての人に強く推薦したい。興味をもたれた方は、まんが喫茶やレンタル本を利用するなどして、一読することを是非お勧めする。


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2009年09月24日

【社会・経済】日本の実質失業率は?

先月総務省より、日本の完全失業率が5.7%と過去最悪であることが公表されたのは記憶に新しいところだ。 

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0902&f=politics_0902_004.shtml

しかし、今日あるビジネス雑誌に目を通したところ、「企業内失業者を合わせると実質失業率は10%近くに跳ね上るのではないかと懸念される」という記事が掲載されていた。というのも、昨年のリーマン・ショックを経た大不況を受けて、雇用助成金の支給でなんとか解雇を行わないで耐えしのいでいる企業も多いのだが、この雇用助成金もうがった見方でとらえると、政府がこれ以上日本の失業率を上げたくないため設けた制度ともいえる。

自社の営業マンに聞くと、愛知地区では自動車産業の景気悪化により、週休4日という会社もあるということだから、驚きである。また、転職活動を行っている知人に聞くと、求人数も少ない上、求人側の求める人材スペックもかなり高くなっているようだ。さらに、人材紹介会社も求職者があまりにも多いため、いちいち個別面談を行わず、電話でのヒアリングで対応しているとか。私が転職活動を行っていたときは、人材紹介会社から「早く会いたい」というラブコールが頻繁に来たのだが…(当時は、法務転職者は希少価値があった)。本当に今は不景気だとしみじみ思う。こうなったら、早く景気がよくなってくれることを祈るしかない。

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タグ:失業率
posted by Sabosan at 22:19| 社会・経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月21日

【音楽】ビートルズ「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」

本ブログはビジネス系ブログなのだが、あまりにも内容が契約だの法律ばかりだと、堅苦しくてあまり面白みがないと考えている(妻からもときどきそう言われている…)。以前より家族のことなどプライベートについては、ある程度触れていたが、私のひととなりを皆さんに知って頂く為にも、本ブログの息抜きコーナーとして私の趣味である音楽・映画鑑賞などについても触れてみたいので、よろしければお付き合い頂きたい。


さて、早速だが、先日NHKのビートルズの特番が放映されていたのだが、ご覧になった方はおられるだろうか?これは最近になってアルバムのリマスター盤が発売されたためのある意味、番宣なのだが、この番組を観て、安直ではあるのだが、無性にビートルズなど洋楽が聴きたくなったのである(ちなみに私は4人の中では、ジョージ・ハリスンが好きだ)。ここ何年かは洋楽はあまり聴いていなかったのだが、再び通勤中にI-podで鑑賞している。

ビートルズといえば、名盤ぞろいなのだが、以下の1枚が私のお気に入りの1枚だ。



<曲目>
@Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band
AWith A Little Help From My Friends
BLucy In The Sky With Diamonds
CGetting Better
DFixing A Hole
EShe's Leaving Home
FBeing For The Benefit Of Mr.Kite!
GWithin You Without You
HWhen I'm Sixty-Four
ILovely Rita
JGood Morning Good Morning
KSgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band(Reprise)
LA Day In The Life


これはビートルズが架空のバンドになりきってショーを繰り広げるというコンセプトで作成されたアルバムなのだが、当時の最高の技術を使用して録音された文字どおり至玉の名盤だ。私のお気に入りはB、G、Lといったところか。ロックファンなら聴いておくべき1枚だと思う。興味を持たれた方は、聴いてみてほしい。


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2009年09月20日

【契約審査】契約交渉において相手方の言質をとってしまう方法

1.契約交渉のテクニック
契約審査を行って、適切と判断する修正案を起案したとしても、相手方にいかにしてそれを受諾させるのが腕の見所であるとは、以前に述べたとおりである。ここで、そのために私が時折使用している契約交渉テクニックを紹介する。相手方が上場企業であるなど、ある程度規模の大きな会社である場合、自社の企業憲章や企業方針などをHPなどで公表していることがある。その中で「取引先と公正な商取引を行うことを心がけます」「公平な商取引」などがある場合、これを逆手にとるのだ。

2.相手方の企業理念を利用して交渉を有利に運ぶ
そこで、一方的に不利益な条項がある場合において、これを公平な形式に改めるには、「貴社の企業理念において明示されているとおり、今回弊社との取引を公平な形式で遂行するためにも、恐れ入りますが、原案を以下の修正案に変更することをご提案申し上げます。」というコメントをつけて当社対案を提示するようにしている。これは、契約書の前文や第1条において「本契約を信義則に基づいて公平かつ公正に締結する」と明記している場合にも、これを言及して交渉にもっていくことができる。

なまじ企業規模が大きく、CSRなどを強く推進している会社などは、企業理念や調達方針をHPなどで公開しており、これを契約交渉の材料にとりこんでしまうのだ。私もこの方法で某東証一部上場企業数社に対して、自社修正案を受諾させたことがある。興味を持たれた方は、ためしに使用してみてはいかがだろうか。


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タグ:交渉
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2009年09月16日

【契約審査】グリーン調達ガイドラインの遵守に関する覚書

先日、得意先より「グリーン調達ガイドラインに関する覚書」の締結を要請された営業部門より本書の契約審査の依頼を受けた。グリーン調達ガイドラインとは、地球の環境保全のために環境の負荷とならない物質を製品に使用することを定めた企業の調達方針をいう。パナソニック、NECなど大手企業は言うに及ばず、中堅メーカーからもこのような方針を定めていることがままある。やはり、世界レベルで企業の環境に対する取り組みが要請されている気運を受けてのことだろう。

さて、相手方より提示された覚書の内容は、いたってシンプルで以下のとおりであった。

・A社(自社)はB社(相手方)の定めるグリーン調達ガイドラインを遵守しなければならない。すなわち、A社は有害化学物質を含有した製品をB社に販売してはならない。
・万が一、A社がこれに違反し、B社に損害を与えた場合には、A社は当該損害を賠償しなければならない。


しかし、商社である自社は製品の設計や製造に深く関与していないため、本覚書の遵守はきわめて困難である。そこで、商社がとりうる対応策としては、

@仕入先より有害化学物質を含有しない旨の保証書を手配する。
A自社と仕入先との間で、得意先と締結したのと同一内容の契約を締結する。

などが考えられよう。このように、得意先と契約を締結しただけでは、リスク対応としては、不完全である。仕入先に対する適切な措置を講じることによって、リスクヘッジをしかけていくことが必要だ。
以下の民間団体が「製品含有化学物質の管理および 情報伝達・開示に関するガイダンス・商社ガイダンス(第1版)」を今月はじめに公表しているようだ。是非、参考にしてみてほしい。

http://www.jamp-info.com/glsystem/index.html


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posted by Sabosan at 22:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 契約書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする