2014年02月20日

【契約書】できるだけ公平な条件で契約書を締結するための交渉テクニック/特に相手方が大手企業の場合には有効…かも?

1.企業法務担当者の日常
相手方が自社に提示してきた契約書について、企業法務担当者が契約審査を行った上、自社の対案を作成し、自社の営業担当者を通じて相手方に逆提示するのは日常業務の一環である。この場合、当社の変更案とその理由をいかに適切に主張するかが、交渉の成否を握ると言っても過言ではない。

しかし、相手方が大手クラスの企業の場合、相手方の契約書(例えば、取引基本契約書)には優位な条項がそろっていることも多く、これを覆すのはなかなか容易な事ではない。それをふまえて、私が会得したささやかな交渉テクニックをご紹介したい。

以下、自社を売主、相手方と買主とした継続的な売買取引を行うにあたり、相手方から取引基本契約書の提示を受けたケースを想定してみる。

<テクニック@ 信義誠実条項を引き合いに出す>
例えば、取引基本契約書の冒頭には以下のような信義誠実条項が明記されているケースが多い。

第1条(総則) 甲および乙は、相互対等、自主性尊重と自由競争の理念に基づき、信義誠実の原則に従って、本契約を履行する。

本条項は、甲と乙が信義誠実・公平の理念にたって取引基本契約を締結し、運用することを明文化したものだ。しかしながら、取引基本契約書の本文には、@自社に不利益な片務規定が存在する、A自社に課せられた瑕疵担保責任規定が商慣習の範疇を超えるほど負担が大きい、ということもよくある。

その場合、「本規定は、第1条の信義誠実条項の理念に違反する不公平な内容となっております。従って、これを変更することを希望します」と主張して自社に不利益な条項は変更させたいところ。

<テクニックA 相手方の企業憲章・CSR等を引き合いに出す>
特に大手企業では自社のHPにおいて企業憲章やCSRなどを公表している。その中には調達先との取引方針として、「お取引先様と公正かつ公平な取引を行い、お互いの発展に努めます」というポリシーが含まれているケースもある。

実際のところ、Googleで「取引先との公平な取引」で検索すると、多くの企業の企業憲章などがヒットする。(なお、以下の検索結果に表示された企業と本記事の話題とは全くの無関係なので、誤解のないように…)

取引先との公平な取引 - Google 検索

このように、「取引先と公平な取引を行う」という企業理念を公表することは大変素晴らしいとは思うのだが、実際に自社に提示された取引基本契約書を確認すると、自社に不利な条項が多く、「これのどこが公平な取引なんだ!」とあきれることもある。このような契約書を提示してくること自体、自らの企業理念に矛盾すると思うのだが…。

そうした自社の企業理念をなぜかたまたま失念していた(?)困った企業に対しては、本ポリシーが表示されているサイトのアドレスを引き合いに出して「本項は、貴社の企業憲章第●項の趣旨から大きく逸脱しているように思われますので、変更をお願いします」と主張することもある。

<テクニックB 親会社と合意済みであることを引き合いに出す>
大手企業グループと取引を行う場合、親会社とはまずまず公平な条件で契約を結ぶことができたが、後日になってそのグループ会社が自社に不公平な条項が盛り込まれた契約書を提示することがあった。これは相手方の法務部門が親子会社で分散して存在しているために起こった状況と推測しているが、その場合、「貴社の親会社様とは過去にこのような条件により契約を結んでおり、貴社におかれましても同様の措置をお願い致したく…」と主張するのも有効だ。

2.まとめ
これらのテクニックのポイントは「自らが企業憲章や契約書冒頭において公平取引の理念を表明しておきながら、その趣旨に違反するような条項を提示することは矛盾していないか」という追及を行うことである。このようなポリシーを公にしている相手方の立場にしてみればグウの音も出ないわけで、理屈上ではこちらが勝っていることは間違いない。

しかし、これに対する相手方の反応は様々で、しぶしぶ条項の削除や変更に応じる会社もあれば、「それとこれとは別」とけんもほろろに全くこちらの要請に応じない困った会社もある。そのような会社の姿勢に対しては、首をかしげるのだが、このあたりの根底には日本人特有の「ホンネと建前」が潜んでいるということか。それならば、最初からこのような「ご立派なポリシー」をオープンにしなければいいのに、とも思う。

このように、契約交渉とは、法律的な根拠に基づいた主張も重要だが、相手方との力関係によって左右されるという側面も多分に有しており、なかなか難しい点がある。企業法務担当者は、それをふまえて自社にとって有利な箇所・不利な箇所を把握しつつ、総合的に判断しなければならない。

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posted by Sabosan at 06:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 契約書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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