2018年01月09日

【書評】「未来の年表 〜人口減少日本でこれから起きること〜」河合雅司(講談社)/少子高齢化と人口減少が進む日本が待ち受ける未来とは?

年末年始休みを利用して積ん読状態だった本を何冊か消化したが、そのうちの一冊がこちら。

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)
河合 雅司

講談社 2017-06-14
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本書では、これからの日本が抱える少子高齢化と人口減少について、近い将来に発生する可能性がある問題(第1部)およびその対応策(第2部)が記されている。なお、本書の帯には以下のようなショッキングな見出しが並んでいる。

2020年 女性の半数が50歳超え
2024年 全国民の3人に1人が65歳以上
2027年 輸血用血液が不足
2033年 3戸に1戸が空き家に
2039年 火葬場が不足
2040年 自治体の半数が消滅
2042年 高齢者人口がピークを迎える


ちなみに、私の個人的な体験としては、

・コンビニやファストフード店での外国人労働者を目にすることが多い。
・地元で高齢者向けケアホームが増加している。
・地元の幼稚園や小学校のクラスの人数が縮小しつつある。
・社会保険料率が年々上昇している。(以前から給与明細をエクセルに転記しているので、一目瞭然)

などが挙げられ、少子高齢化と人口減少を肌身で感じている。2015年の国勢調査の結果、日本の人口は1億2700万人と報告されており、人口減少の事実(5年前に比べて96万人減少)が確認されているが、今後、この動きが加速するのは確実。本書では、このまま人口減少が進行した場合、経済規模の縮小と衰退・労働力の不足・インフラの未整備・治安の悪化・認知症患者の増加などのネガティブなシナリオが予測されている。一応、その対応策も提言されているが、これらの問題を完全に回避することはできないだろう。

それでは、個人レベルで何をどうすれば良いかだが、実は皆目検討がつかない。せいぜいできることと言えば、健康管理に注意を払い、家族と良好な関係を築きつつ、将来に備えて貯蓄や投資に励み、年を重ねても働き続けることができるようスキル向上に努めることだろうか。現在、年金の支給開始年齢は65歳だが、将来的にはこれが70歳〜75歳となるのはまず確実。すると、当然ながらその年齢になっても働かなければならないだろうし、だからと言って、「ぶら下がり社員」では淘汰される羽目になりかねない。従って、長期的な視点に立って、ビジネスパーソンとしての能力を鍛え続けなければならない。もちろん、言うだけは簡単で、実行するのは非常に難しいが・・・。

もちろん、本書に書かれている一字一句が将来現実になるとは断定はできないが、少なくとも「そうなるかもしれない」と悪い方向に考えて、個人レベルで「細く長く人生を送るための心構え」を持つのは決して無駄にはならないと思う。

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2017年11月09日

【書評】「名将名言録  一日一言」火坂雅志(角川学芸出版)/古の名将たちの叡智に触れる

以前にも紹介したとおり、私は、PSP Vitaで「信長の野望」をたまにプレイする関係上、戦国時代を舞台にした歴史小説をよく読んでいる。

企業法務担当者のビジネスキャリア術: 【歴史】コーエー「信長の野望 創造 戦国立志伝」をプレイした感想/Amazonレビューの酷さに不安を覚えるも、プレイしてみるとなかなかの良作

そして、ここ最近最もよく読んでいるのが、故火坂雅志氏の作品。上杉景勝の名軍師と言われた直江兼続の生涯を描いた「天地人」などは氏の代表作だ。(2009年にNHKで大河ドラマ化もされた)

天地人〈上〉 (文春文庫)天地人〈上〉 (文春文庫)
火坂 雅志

文藝春秋 2010-04-09
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その他、以下の作品なども読んだことがあるが、文体がスマートで読みやすい。

真田三代 上真田三代 上
火坂 雅志

NHK出版 2011-10-27
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虎の城〈上〉乱世疾風編 (祥伝社文庫)虎の城〈上〉乱世疾風編 (祥伝社文庫)
火坂 雅志

祥伝社 2007-09-01
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臥竜の天(上) (祥伝社文庫)臥竜の天(上) (祥伝社文庫)
火坂 雅志

祥伝社 2010-06-11
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天下 家康伝 <上>天下 家康伝 <上>
火坂 雅志

日本経済新聞出版社 2015-04-25
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そんな火坂ファンである私が偶然に書店で見つけたのが、こちらの書籍。

名将名言録 一日一言名将名言録 一日一言
火坂 雅志

角川学芸出版 2009-11-11
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私はよく過去の偉人の名言集をそれなりに読んでいるが、下手なビジネス書よりよっぽどためになることも多い。

松下幸之助 成功の金言365松下幸之助 成功の金言365
松下 幸之助 PHP研究所

PHP研究所 2010-12-18
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ドラッカー 365の金言ドラッカー 365の金言
P F ドラッカー ジョセフ A マチャレロ

ダイヤモンド社 2005-12-01
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カーネギー名言集 文庫版カーネギー名言集 文庫版
ドロシー カーネギー

創元社 2016-05-24
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このように、武将&名言ファンである私には、こちらの「名将名言録  一日一言」はうってつけなわけで、思わず衝動買いしてしまった。

本書では、戦国時代の武将を中心に、彼らが「座右の銘」とした名言・格言が一日一ページで紹介されている。私も購入後、毎朝その日のページを開いて名言に目を通しているが、名将たちの叡智に触れるようで、なにやら新鮮な気分だ。私が思うに、ビジネスパーソンは、専門スキルを極限まで高めることは確かに重要だが、その一方で、年齢を重ねたり、地位が高くなるほど、人間性や人格を高める必要があると思う(下手をしたらこちらの方が重要かも)。そして、それらを高めるためには、「本を読む」「人と会う」「旅をする」「失敗する」などがあげられるが、このような名言集を読むことは決してマイナスにはならないと思う。

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2017年08月09日

【書評】「戦略>戦術」の考え方を仕事に活かしてみる/「銀河英雄伝説」を再読して重要性を再確認

私が学生時代の頃、愛読していた小説に田中芳樹の「銀河英雄伝説」という作品がある。

人類の近未来を舞台にしたスペースオペラとして、異なる政治勢力の戦争や国家内部での権力闘争などを描いた群像劇で、未だに根強いファン層を持っている作品だ。アニメ化・漫画化・ゲーム化・舞台化など幅広く二次創作がされており、これらから原作小説に興味を持った人も多いだろう。

企業法務担当者のビジネスキャリア術: 【映像】田中芳樹原作のスペースオペラ「銀河英雄伝説」本伝がGyao!で一挙放映される/学生時代の頃、田中芳樹の作品を愛読したものです

先日、久しぶりに「銀英伝」を図書館で借りて読んでいると(原作本は引越しの際に処分してしまった)、自由惑星同盟に所属するヤン・ウェンリーがこのような発言をする場面があった。

「戦略とは戦争全体の勝敗を決めるための基本的な構想とそれを実現するための技術。戦術とは局地的な戦場で勝敗を決するための、いわば応用の技術。つまり、状況をつくるのが戦略で、状況を利用するのが戦術だよ」

私が本作を最初に読んだのは学生の頃で、正直なところ、このセリフにはあまりピンと来なかった。しかし、社会人となった今になって改めて目にすると、このシンプルな発言が非常に含蓄のある言葉だと実感させられる。

つまり、戦略(大筋、ガイドライン)は戦術(方法、テクニック)に優先する概念で、後者がどれだけ優れていても、前者を凌駕することはありえないということ。例えば、仕事でプレゼンを行う機会があると仮定する。プレゼン時に使用するPowerpointの表現をいかに工夫するか、スピーチの仕方を改善するなどの行為は、いわば「戦術」に相当する。しかし、これががどれだけ優れていたとしても、プレゼンの目的や達成するべきゴール(=戦略)を明確にしなければ、そのプレゼンは決して成功しないだろう。従って、どのような仕事に取り組むにせよ、まずは大枠(目的・経緯・ゴール)などを決定した後に、個別的な方法論にシフトすることが大切だと思う。

この「銀英伝」という作品は、単純に宇宙戦艦同士のドンパチを描くだけではなく、作者が登場人物のセリフを通して、専制政治に対する民主主義政治のあり方を説くなど、なかなか奥が深い作品だ。従って、興味をもたれた方は一度、原作小説やアニメ作品に触れることをお勧めしたい。

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)
田中 芳樹 星野 之宣

東京創元社 2007-02-21
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2017年02月05日

【書評】リンダ・グラットン「WORK SHIFT」(プレジデント社)/2025年の世界に備えるために働き方を<シフト>する

私にはAさんという10年来の友人がいる。このAさんは某企業でバリバリの営業マンとして活躍しており、私とは定期的に会って情報交換する仲だ。彼は、普段から多くのビジネス書を読んでおり、その影響もあって私もビジネス書を読むようになった。

そんな中、昨年Aさんと会ったときに「この本を読んでおいて損はないぞ。」と強く勧められた本がある。その後、私もすっかり忘れていたが、先日本屋をぶらついていたところ、たまたまその書籍を見つけたので、早速買って読んでみた。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン 池村 千秋

プレジデント社 2012-07-28
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<目次>
第1部 なにが働き方の未来を変えるのか?
第2部 「漫然と迎える未来」の暗い現実
第3部 「主体的に築く未来」の明るい日々
第4部 働き方を<シフト>する

「下流民か、自由民か。地球規模で人生は二極分化する」という紹介文句があり、一体どんな本だと思って読み進めたのだが・・・。確かにAさんの言うとおり、ビジネスパーソンには参考になる本だと思う。ただし、正直言って、第2部と第3部はあくまで著者による仮定の話を描いたもので、あまり共感はできなかった。また、読者にたいして「働き方をシフトせよ」と主張しているが、より一歩踏み込んだ具体策に欠けているような気がする。

しかし、2025年も現役ビジネスパーソンである人にとっては、それなりのヒントが記されているのは確か。そこで、それらを以下のとおり要約しておこう。

・これからの時代は、全世界規模で大きな変化の波が発生する。その結果、毎日の生活が根本から変わるだろう。その要因は、@テクノロジーの進化、Aグローバル化の進展、B人口構成の変化と長寿化、C社会の変化、Dエネルギー・環境問題の深刻化の5つである。
・不確実性が強くなるであろうこれからの時代は、労働者は働き方を意識的に変化(=SHIFT)させなければならない。そのポイントは以下の3つである。
@複数の高度な専門技能を磨き、自分を差別化するための「自分ブランド」を築くこと
A友人関係を維持しつつ、バラエティに富んだ広くて浅い人的ネットワークを育てること
B所得や消費のみに重きを置くのではなく、家庭・趣味・社会貢献にも重点を置いた生き方に転換すること

@については、以前にもネットで似たような意見を目にしたことがあり、これには全く同感。

仕事をしたら“10年後のサラリーマン”が見えてきた(中編):時給800円と8万円――仕事をしていて、なぜ100倍もの差がつくのか (4/5) - ITmedia ビジネスオンライン


ただし、言うのは簡単だが、実行するのは本当に難しい。著者は連続性のある複数の専門分野を習得することを推奨しているが、例えば、法務の隣接分野としたら、知的財産や総務あたりだろうか・・・。いずれにせよ、現代のビジネスパーソンは、「生涯現役」の精神をもって絶え間ない自己研鑽を続けていかなければならないのは確かだろう。あとは、ある程度の柔軟性を保持しつつ、主体的・能動的に人生設計を行うなど。というのも、「国や会社に人生設計を丸投げしてもなんとかなった時代」は、すでに過去の遺物となっているからだ。

興味を持たれた方には、本書の一読をお勧めしたいが、時間のない人は、以下の要約サイトを確認するだけでもいいと思う。(これは冒頭のAさんの言葉より)

書籍 ワーク・シフト(WORK SHIFT) 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図/リンダ・グラットン(著): 「最高のゴール」を目指して!



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2016年09月15日

【書評】「ズッコケ熟年三人組」那須正幹(ポプラ社)/ズッコケ三人組シリーズの本当の最終作

以前に児童向け小説の「ズッコケ三人組」とその数十年後を描いた「ズッコケ中年三人組」のシリーズについて触れたことがあった。

企業法務担当者のビジネスキャリア術: 【書評】「ズッコケ中年三人組」那須正幹(ポプラ社)/懐かしい!小学生の頃にズッコケ三人組シリーズはよく読んでいました

前者シリーズではハチベエ達は小学6年生のままで、全く年をとらなかったが、後者シリーズは40歳という年齢からスタートし、age41、age42、age43・・とタイトルにあるとおり巻を重ねるたびに年齢を重ねていった。そして、2005年に中年組シリーズがスタートしてから10年が経過して、2015年に発売された本作では、主人公達はとうとう50歳の大台に突入する。

児童書シリーズの金字塔『ズッコケ三人組』ついに完結! ファンからは“ズッコケ老人三人組”を望む声も | ダ・ヴィンチニュース



これで1978年から続いていた「ズッコケ三人組」シリーズは本当に完結するようで、なにやら寂しい限り。本作では、2014年に広島市を襲った土砂災害をテーマにしており、人の死が描かれるなど若干重たい内容となっている。さらに、ミドリ市の再開発などを絡めつつ、それほど大きなドンデン返しもなく物語自体は終了する。最後は、市議会議員であるハチベエの将来の「転職」を予感させる場面で終わる。

できればもう少しシリーズを継続してもらい、60歳、70歳となったハチベエ達の人生を追いかけたい気もするが、これ以上続けると惰性になってしまうので、この辺りで幕引きにするのが良いのかもしれない。ともあれ、私のように子供時代に「ズッコケ三人組」を愛読した人は、是非中年組シリーズにも目を通してみることをお勧めしたい。

ズッコケ熟年三人組ズッコケ熟年三人組
那須 正幹

ポプラ社 2015-12-01
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2016年05月24日

【書評】井川意高「熔ける 〜大王製紙前会長井川意高の懺悔録〜」(双葉社)/社会的にも注目を浴びた背任事件の真相とは?

先日、図書館で借りたのがこちらの本。

熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録
井川 意高

双葉社 2013-11-13
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2011年に大王製紙の創業家出身の会長がギャンブルへの転用目的で100億円以上を会社から流出させたという事件が発覚したのは記憶に新しいところ。本書は、その当人が幼少期の生い立ちから、社会人としてのキャリア、そして資金流出を引き起こした経緯を赤裸々に振り返った回顧録である。

最も気になるのは、「公私共に何ら不満のないはずの大企業経営者が、なぜギャンブルで破滅したのか?」だが、文中において、「勝った時の快感が忘れられず、たとえ今は負けていても次の勝ちでとりかえせる」と思い込んだから・・と触れられている。本人には、ギャンブルにのめり込まずとも充分過ぎる収入はあったと思うが、ギャンブルで味わうスリルとはそれほど魅惑的なのだろうか?

かくいう私自身は、パチンコ、競馬、競輪、FXなどのギャンブルには一切手を出したことがない(パチンコ屋で何度かトイレを借りたことはあるが・・)。なぜなら、こういったギャンブルでは「場」を提供する胴元が最終的に必ず勝つ仕組みになっているからだ。そもそも、ユーザが常に勝ち続けるならば、胴元はとうに破産しているはず・・・。結局のところ、長い目で見ると、ギャンブルでトータル的に「勝ち」に持っていくのは、イカサマでもしない限り不可能だろう。

私の知人には、競馬やパチンコをやっている者は幾人かいるが、ボロ儲けして、ウハウハな者(?)は一人もいない。彼らは一時的には胴元に勝つことはできても、最終的には負けている。というわけで、私はこれからもギャンブルに手を出すつもりは一切ない。どうしても、ギャンブルで勝ちたいならば、「ギャンブルをしない」ことにつきると思う。

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2016年03月09日

【書評】「最強の成功哲学書 世界史」神野正史(ダイヤモンド社)/「三国志」の名軍師 賈詡から学ぶ処世術とは

高校時代に世界史を学んだことについては以前にも触れたかと思う。私は、それをきっかけに歴史好きになったクチだ。

企業法務担当者のビジネスキャリア術: 【書評】「もういちど読む山川世界史」(山川出版社)/高校時代にお世話になった教科書と再会する

先日、たまたま本屋で世界史をネタにしたビジネス書を見つけたので、早速買って読んでみた。

最強の成功哲学書 世界史最強の成功哲学書 世界史
神野 正史

ダイヤモンド社 2016-02-05
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本書のテーマは、「歴史を体感し、その流れや意味を理解し、自分の置かれた状況と照らし合わせた上で、そこから人生訓を汲み取ろう」というもので、著者は「歴史は人生教訓の宝庫」と述べている。なるほど、言われてみればそのとおりかもしれない。特に他人の失敗から学べる点は多々ある。

本書では、ナポレオン、ハンニバル、ビスマルクなどヨーロッパ圏の偉人や、上杉謙信、豊臣秀吉、徳川家康などの戦国武将のエピソードや人生訓が紹介されている。そして、中国史からは後漢末期から三国時代に活躍した蜀の初代皇帝である劉備と魏の軍師である賈詡(かく)が取り上げられている。ちなみに、私が本書で一番気に入ったのが、この賈詡のエピソードだ。ダイヤモンド・オンラインにおいて、この章が全文抜粋されているので、以下のとおり紹介しておこう。

“100点ではなく、200点を取る部下は嫌われる”『三國志』の名軍師に学ぶ処世術|最強の成功哲学書 世界史|ダイヤモンド・オンライン
“能ある鷹の「爪」の出し方”『三國志』の名軍師に学ぶ処世術(2)|最強の成功哲学書 世界史|ダイヤモンド・オンライン

上記で説明されているとおり、賈詡は、後漢末期に一時期曹操と敵対する地方軍閥の張繍(ちょうしゅう)に仕えており、自らの策略によって曹操の息子を討ち取るほどの智謀を有する。しかしその後、曹操に帰順し、魏の参謀として活躍する。曹操が築き上げた「魏」は三国時代で最も大きい国家として繁栄するが、国家が安定期に入った後も、その中でも自らをうまく処して、大臣クラスまで出世する。しかし、賈詡はその後も驕ることなく謙虚に振舞い続け、大往生したという。生え抜き組ではない外様の立場(しかも、過去に主君の息子を謀殺している)からキャリアをスタートして、そこまで上り詰めるには、単に頭脳が優秀だけではなく、他人との関係をうまく調整する処世術にも優れていたという証だろう。

これと対象的なのが、同じく曹操に仕えた参謀である荀ケ(じゅんいく)や揚修(ようしゅう)だ。荀ケは、曹操が地方軍閥として頭角をあらわした頃から曹操に仕えて、その覇業を助けていたが、魏王になろうとする曹操と意見をたがえるようになり、晩年は不遇であったという(一説には自殺したとも言われている)。また、揚修は賈詡や荀ケに匹敵するほどの智謀を誇る人材であったが、曹操の考えを先に深読みするなどの振る舞いが目立ち、曹操の怒りを買って誅殺されてしまう。

賈詡という人物を現代ビジネス風に解説すると、過去に転職歴が多いながらも、最後に入社した会社でコツコツと実績を上げて、社内との人間関係も配慮しつつ、うまく身を処して、重役クラスまで出世したというところか。私もコーエーの三国志ユーザでもあるので、賈詡については一応知っていたが、こういうエピソードを知ると転職歴が多い自分としても、おおいに共感するものがある。特に周囲の「妬み」「恐れ」をいかに抑制するべく振舞うかという行動原理は、現代のEQにも通ずるものがある。

学校では教えてくれない「こころの知能指数:EQ」を育む5つの要素 | ライフハッカー[日本版]


やはり歴史は面白いし、ためになる。他人の成功談や失敗談から学べるものは数多い。最近の私は、SLGの「三国志」や「信長の野望」がリバイバルしているのをきっかけに、歴史関係の書籍をよく読んでいるが、いいものがあれば本ブログでも紹介していきたい。

「三国志」 乱世の人物学「三国志」 乱世の人物学
守屋 洋

PHP研究所 2013-02-01
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